日の当たるところへ

小説家を目指して。

謝りたい人がいる

謝りたい人がいる
でも、自分が罪悪感から逃れたいだけだとも分かっていた
知らぬ間に誰かを傷つけていた私
次は勝手にいなくならないようにしよう

小説:ブーメラン

 白沢多恵は、表情を変えずにブラウザの画面を閉じた。作業もそのままに、ノートパソコンを畳んで布団に寝転がる。

 くだらない。何が泣けるのか、何が良い話なのか…胸中の靄を払拭出来ないまま、木目調の天井を眺める。多恵の視界に映るのは、年季の入った汚れが目立つ天井…ではなく、先程のインターネットで読んだ漫画だ。

 近頃のソーシャルネットワーキングサービスでは、漫画や小説を書いて発表することも多くなってきている。公開された作品の数々は、大衆の目に留まり拡散され、多く広まればメディアに取り上げられる。人目を惹きつけるようなキャッチコピーを考えて、今度は記者がお茶の間に拡散する…という流れだ。多恵が読むきっかけになったのも、ニュースで拡散されていたからである。

 しかし、開いて読んだ直後、多恵は眉を顰めた。あまりの作品のつまらなさに、ため息が漏れた。コメントせずブラウザの画面を閉じたのは、良心が働いたとも言える。

 こんなものが泣けるのかと言う心底からの嘆きは、多恵からあらゆる気力を奪う。靄がかった思考の渦で明らかになったのは、それが「読み物」であると言うことだ。

 読み物と小説は違う」

ある作家が語っていた言葉を思い出し、多恵は一人、頻りに頷いた。

 小説に限った話ではない。先程の漫画にしろ、意欲は感じられてもそこには情熱が無いのだ。何せ展開が読めて綺麗にまとまっているから、伝えたい情念があるのかないのか、よく分からない。学生時代に課題を与えられて書いた、作文のようにも感じられる。

 …枕元のスマートフォンからブログを更新しようとして、多恵は気付いた。

「私のことじゃないか」

 冷えた頭が多恵に、重大な失態を気付かせていた。

退職日を迎えるまでもなく

先方から話があった。

昼休み直前、外出中の上長から電話越しで

「もうそういう空気だから、欠勤扱いになるけど今日まででいいよ」と。

何かが切れて「とりあえず考えておきます」とだけ言って受話器を置いた。

その場で、じゃあもう行きませんって言わなかっただけ、えらかったな。

 

昼休みになって、悩んで悩んで、思わず身内にLINEまでして悩み抜いた。

Twitterでも呟いた気がする。

女二人の挨拶の無視、仕事をさせない姿勢、聞こえるように言う悪口。

正直、心はもう限界だった。

 

そんな私に、母は「向こうが感情的ならこっちは冷静になるべきだ」と。

 

午後から、給与のシミュレーションをひたすら繰り返した。

基本給から社会保険や他課税額を差し引き、マイナスにならないことを確かめた。

勤怠表と欠勤届を書いて印を押し、押印したものをコピーして控えた。

タイムカードも控えて全て用意した。

上長の言うことなど知ったものかと、全て聞き流して提出して、帰ってきた。

 

挨拶なんてなかった。

 

ちなみに、女二人はと言うと

私が上長と個室で話しているほんの数分の間に

机の引き出しにあえて入れておいた健保組合の書類(本社から配布された)と

社用の氏名印(本社支給品)を机の上に出して

「おもちかえりください」という汚い字のメモを残して、給湯室で談話していた。

 

言おうと思えば言ってしまえるのかもしれないけれど

次元が低すぎて、同じ土俵に立ちたくないから

メモを捨てて社用の氏名印だけ置いて、健保の書類だけ持ち帰った。

(と言って、どうせそれも捨てるのだけれど。)

 

この会社に入って、学んだことがある。

 

女二人という職場には絶対に行くなということ。

私物をあまり置かない方が良いということ。

(幸いにして、私は一日で持ち帰ることが出来る程の物しか置いてなかったけれども)

私物を置いたとしても、退職を伝える前には全て持って帰っておいたほうが良いということ。

 

そして、一つでも労働基準を知っておけということ。

その労働基準に違反している会社にはたとえ他に職が無くても入るなと言うこと。

違反していたことさえ気づかずに就業していたから、無知を恥じても遅いのだけど

後になって調べていたらこんなものが出てきた。

 

労働基準法第34条3項

労働安全衛生規則第43条

 

辞める時に会社の本性が分かるというけれど、本当にそうだ。

退職を決めて良かった。

退職日まで勉学に励む

意気揚揚挑我敗(意気揚揚と挑み我敗れたり)

人世荒波如難解(人世は荒波の如く解き難し)

今日唯読書思物(今日唯書を読み物を思い)

悔恥過日勉学励(過日を悔やみ恥じて勉学に励む)

 

高校時代、古典の授業で読む漢詩が好きでした。

魏の文帝を改めて調べていたら、ふと書きたくなったので

それっぽく書いてみたのですが、やっぱり難しいですね。

返り字の法則(レ点等)は、読み方としては習っていても

書き方としては、大人になってから初めて知ったようなものです。

 

実は、タイトルの退職日までというのは

職場で庶務という仕事さえ無い(本当の意味で仕事が無い)ので

手持ち無沙汰なら退職日までいろいろ勉強しようよ、と。

 

きっとその姿は、浮いているかもしれませんが

少なくとも、私にとっては充実しています。

…って考えないとやってられないのよ!という話でもありますが。

 

たまに見かける、ふてぶてしい猫のような振る舞いを心がけた方が

今の私にはいいのかもしれませんね。

定時で帰れるからって労働基準法に違反してないわけじゃなかった

タイトル通り、です。

退職するので書類整理をしていたところ、ふとある手続きについて気付いたので

父に聞いてみたところ「本当は違法だ」ということをやっていた模様。

こんなご時世なのでそういう中小企業は少なくないらしいけれども

まさか自分がそういう企業に勤めていたとは思いもしませんでした。

「定時で帰れるだけありがたく思え」って兄に言われていたところなので猶更。

 

ツイッターをやってひたすら愚痴っている場合ではなくて

こんなところにこんなことを書き込んでいる場合でもなくて

今の私に必要なのは、勉強なのかもしれないですね。

時間が欲しい

当面、書く内容は一行か二行になりそうです。

ゆっくり眠る時間と、ゆっくり小説を書く時間と、ゆっくり自分と向き合える時間が欲しいです。

 

退職届

退職届を書いていました。

解放感と、罪悪感と、教訓を胸に刻みながら。